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『この世界にようこそ』ができるまで その4 [book]

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『この世界にようこそ』ができるまで その4
対談 広瀬裕子(作者)× 藤原康二(編集)


■アリシアさんとの旅

広瀬 ちょうど震災が起きた年、アリシアさんとアメリカのアリゾナを旅したんです。アメリカのネイティブ・インディアンのホピ族に会いに行きました。
藤原 そういえば、その経緯はお聞きしていませんでした。
広瀬 震災前、仙台に住んでいた友人が関西に移住していたので、バークレーから帰って来た直後、奈良で会いました。その友人は以前からアリシアさんと交流があり、ちょうど私と会っているまさにその時、別の友人から電話が入ったんです。その電話で、夏にアリシアさんとアリゾナに一緒に行くことになったと聞いて。「裕子さん、アリシアがホピに行くって言ってるけど、一緒に行く?」「行く!」と即答したんです。
藤原 それ、すごい偶然ですね。
広瀬 そうなんですよ。それで、日本人の女性5人とアリシアさんと6人で、ホピ族の人たちが暮らす村に行ったんです。実は、ホピ族が暮らす土地にはウランの採掘場があって、そこで採掘されたウランを使って作られた原子爆弾が日本に投下されてしまった。そのこともあって、以前からホピの人たちは日本に思いをよせてくれていて、震災後にいち早く日本に向けて声明を出してくれたんです。
藤原 その旅で、初めてアリシアさんとお会いしたんですか。
広瀬 その前に、アリシアさんが日本に来ていた時にライブに行ったことはあったのですが、いちファンとして参加したので、交流はありませんでした。まさか一緒に旅をすることになるとは、想像もしていませんでした。
藤原 でも、きっと難しいだろうから、ダメもとで相談してみようと。でも、私はアリシアさんと聞いた瞬間、アリシアさんの絵が表紙の本が本屋さんに並んでいるところが想像できたんです。
広瀬 そんなこと言っていましたね。それで友人を通じて、英訳した文章と絵をお願いしたいという内容のメールをアリシアさんに送ったんです。
藤原 最初のコンタクトだけお願いして、正式な相談内容は私から送ったのですが、メールしたその日のうちに快諾の返事をくれました。広瀬さんの文章を読んで、内容にとても共感してくれたようで。
広瀬 快諾のお返事をいただいた時は、本当に嬉しかった。


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アリシアさんと、アメリカのネイティブ・インディアンのホピ族に会う旅に




■アリシアさんへのお願い作戦

藤原 そこからすぐ、どうやってアリシアさんに絵のお願いをしようかという作戦会議をしました。
広瀬 描いてもらいたいものはあるけど、あまり決め込んで伝えてしまうと、アリシアさんの個性が出ないかもと思って。どうお願いするのがいいか、あれこれ相談しましたね。
藤原 まずは2人で絵本の基本フォーマットの30ページ分(15見開き分)に文章を振り分ける台割の作業をしました。
広瀬 各ページに描いて欲しいざっくりとしたモチーフだけ伝えて、あとはアリシアさんにお任せすることにしました。
藤原 お願いしてから締め切りまでを2ヶ月に設定してお願いしたのですが、予定よりも随分早く、1ヶ月強で全て描きあげてくれました。
広瀬 最初の絵が届いてからは、毎日数枚のペースで絵がメールで届くので、毎朝ドキドキしながらメールを開いていました。
藤原 絵もスムースに完成まで進みました。そういえば、途中で私があまりにもダメ出しをしないので、「本当に大丈夫ですか」と聞いてきたことがありましたね。
広瀬 これまでの本作りでは、思い通りにいかないこともあって、自分が理想とする方向に持っていくのが難しいこともありました。出版社の営業の方から、タイトルの文字の大きさだとか帯の文章で、もっと大きくインパクトがあるようにしないと、とダメ出しをされることも多かったのです。直接、営業の方とお話ができればよかったのですが、編集の方を通じて相談するので、自分の意図を伝えるのが大変で。だから、こんなに上手く進んで本当に大丈夫かなと思ってしまったんです。
藤原 そうだったんですね。
広瀬 何を言っても否定しないので、ちゃんと考えているのかなと思ったこともありましたよ(笑)。
藤原 ちゃんと考えていますよ。褒めて伸ばすタイプで、あまり否定はしないようにしているので。でも、全て肯定しながらも、さりげなく軌道修正していたんです。でも、執筆を始める前に、これまでの本作りのことや、震災後のこと、本への思いをたくさん聞いていたので、広瀬さんが作りたい方向というのは体の中に入っていました。私もミルブックスの考え方をお伝えしていたので、意思の疎通はしなくても大丈夫な状態にはなっていたと思います。
広瀬 一番忙しかった頃は、何のために書いているのかがわからなくなる瞬間があって。すごく好きな仕事をしているはずなのに、好きじゃなくなってしまいそうだった。本もとても好きなのに、本屋さんに行けない時期もありました。
藤原 それは初耳でした。じゃあ、リハビリとしてもこの本はとても良かったですね。
広瀬 決してリハビリではないですが(笑)。でも本へもう一度向き合うためのリハビリだとしたら、最高です。


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ページごとに文章を入れたものと、描いて欲しい内容だけをアリシアさんに送って、自由に描いていただきました。




■ずっと読まれる本にしたい

藤原 広瀬さんが紡いだ言葉をどれだけ深く伝えることができ、それを長く浸透させることができるかということを考えました。アリシアさんの『地球の上に生きる』『太陽とともに生きる』の2冊は40年以上経った今でも絶版にはなっていない。装丁も変わらないままで、ずっと読まれ続けています。
広瀬 本のあり方として、理想的ですよね。
藤原 だから、この2冊みたいな本にしたいと思ったんです。
広瀬 調子が良くない時期、多くの文字を読めなくなることがあります。そういう時でも開ける本にしたかった
藤原 私も震災後は特にそのことを考えるようになりました。多くを詰め込むのではなく、少ない情報で多くのことを伝えられるような本を作りたい。どんな状態の時でも読むことができて、その時々で心象が変わるような本がいいなと思うようになりました。アリシアさんの線画は、そういう意味でも理想的な絵です。広瀬さんの文章も読んだ時の心の状態で風景が変化し、広がっていく内容だったので、ここにアシリアさんの軽やかな絵が載ったら絶対にいい本になると思いました。アリシアさんの絵が上がってきて、どうでしたか。
広瀬 想像以上に素敵で、最初の1枚を見た瞬間に、アシリアさんにお願いして本当に良かったと思いました。私は直感で決めることが多いのですが、直感でアリシアさんがいいと思った私は偉いと自画自賛したくなりました。
藤原 広瀬さんの思い付きが今回は完璧にはまりましたね。
広瀬 絵が言葉の説明だけになっていないところも好きです。言葉と全く関係ない訳ではないのですが。絵と言葉が同じページにあることで、より物語が広がっていく。
藤原 特に好きな絵ありますか。
広瀬 どれも大好きです。全体で言うと、星と月と太陽が出てくるところがいいですね。今回の絵は、町の中だけでも自然の中だけでもない風景で、どこでも生きていくという印象があるところも好きです。


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その5へつづく
http://millebooks.blog.so-net.ne.jp/2015-05-16


■その1はこちら↓
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■その2はこちら↓
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■その3はこちら↓
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